サルベージ/千波 一也
 


巻き戻された、気がして

夜を
何度も聞き返す


この手が、
あるいはその胸が
用いようとする意味は
おそらく誰かの
船底だろう

唯一
月がおびえる頂



 鎖につながれた森が
 空へと凪いでゆく

 その先端に
 鍵がある


 研いではいけない
 声が、する



聞き耳を立てながら
ひとり芝居は、
終われない

束縛するものすべてを
放り投げても

ひとつにはなりえない



孤独という名の豊穣を
千年の火で出迎えて

そっと、
盗み取る

禁忌のしずく



素顔に濡れた
指さきで、いま










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