小詩集【くじらヶ丘にラベンダーの雨】/千波 一也
下にも
向こうにも
まさか、と
わらってみるのも
物思いにふけってみるのも
それぞれに
すてきないのちの不思議
分かつことに
良いもわるいもない
たとえばそれは風のぬくもり
適度につたわる
うるおい、のような
二、ラベンダーの雨
むらさきいろの約束は破られることなく
野の一面に揺れる香りは
けものの匂いに
けがされない
いろと香りがラベンダー
あまりに無知な
目と鼻の先で
しずかに夏は終わりへ向かい
かるい汗のしたたりに
ハンカチが浅く溺れている
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