小詩集【シンメトリー・パンドラ】/千波 一也
ぐ川面に
満ちて
ひさしく
舞う鈴の音に身を尽くし
澪標こそ待ち人のかげ
舞う鈴の音に
道標
扇をかえせば
いざないの波
日傘はほころぶ
けなげな芳香
編み笠ひとつ
小石にゆるせば
むらくもの笑み
やわらかな風
舞う鈴の音に身を尽くし
舞う鈴の音に
語り部は
なる
四、シンメトリー・パンドラ
左目が宝石を映すなら
右の目には砂つぶを
片耳があしたを聞いているなら
もう片方で還らぬ日々を
此処が、いま
過ぎゆくすべてに挨拶を
迷わぬつもりが
いつしか独りきり
まんなかは見晴らしが
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