小詩集【レトロな猛毒】side.B/千波 一也
 
です、

失うことは優しい波間に
うずもれてなお、
冷たく醒めて

憂いのすみから古巣はかけます


こころあたりを引き裂くたびに
たとえば虹に恋いこがれ、
たやすく染まる橋です
今朝も

凛として、
刺されることを厭う針
夜はまだまだ月のものです


いざなううたは誰がため
行方もまぎれて
ここは遙かに

遙かに、こぼれて




四、春秋


隙間をあやすように
いたみのたぐいも
たぐり寄せる、
ゆび

からくりかも知れない、
そんなたとえのむなしさに
あらがうことを捨てたとしたら
だれかの日記を
風はめくるだろう
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