いつかまた、会えるから、(マリーノ超特急)/角田寿星
 

かくて明くる朝 俺とあんちゃんは小船へ向かった
俺は右腕の義肢に蟹除けの笛を巻きつけ
ひゅんひゅんと鳴らす 蟹に喰われないように
命がけで下らないことをするのは
なにもこれが初めてじゃあない

梯子をかけて甲板に昇る
船室のドアの取っ手が外れて顔を見合わせる
俺とあんちゃんは
真っ暗の船倉を往復しては
水気を少なからず吸った本や紙片をかき集めた
満杯のハシケを曳くアクアバイクはまっすぐ進めない
みんながみんないろんなものに酔っ払いながら
塩まみれ海藻まみれで運んできた本の山を
爺さんは生き別れた孫でも待ち受けるように出迎えた

いそいそと本を仕分ける爺さんに

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