青い預言者(マリーノ超特急)/角田寿星
 

陸沿いに敷かれた海上の線路をはしる列車はやがて大きく迂回して切り立った崖に囲まれた入江の駅に到着する。この駅の正式名称は「切り立った崖に囲まれた入江の駅」であるがわたしたちは秘かに青い預言者の駅と呼んでいる。峻険な崖を縫うように不揃いの階段を昇っていくと崖の上には十数軒のささやかな家々が枯草色の壁を吹き上げる潮風に晒している。村はずれのふかい森に接するように青い預言者アスルのかつての住処があった。

アスルがどのようにこの村にやって来たのか知る者はいない。或る者は南から来たのだと言うが南回りの列車しか存在しないこの区域では線路を徒歩で渡るか陸沿いに点々と海を渡る以外の手立てはない。或る者は
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