メモ/はるな
必要なのは、ひろい思考とおもう。
ひろびろとあかるくつめたく心地の良い部屋。
しかもいつどこにいてもそこに行くことのできる。
わたしはふだん灰色の部屋にいますが、
そしてその部屋にはドアーがあったりなかったりするが、部屋を出ることができる。
出入りすることのできる部屋をいくつか作ることだ。
そして困難なく、可能なかぎりそれを制御すること。
しかしながら時々は、思いもよらない物事に翻弄されること。
現実は、頭のなかよりももっとせつないから。
むすめの清潔なおでこ、頬、まっすぐな髪の毛に、
ひとつでも願いをのせることがおそろしい。
ほんとうはいまだって、世界のあらゆるものごとがわたしにとっておそろしく、太刀打ちできない。
それでも途方にくれずにいるのは、
その爪、寝息、笑ってしまうようなわがままや、
おもたい瞼をもちあげようとして
でもやっぱり閉じてしまう夢のふち。
わたしが灰色の部屋を持ちはじめたのはいったいいつからだっただろう。
いくつもの物語がそれをつくった。
いまでも、たびたびその中で遊ぶ。
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