エインスベルの反逆(十八)/朧月夜
エインスベルは、王宮に入って来た時と同様に、
一人きりで宮殿の門を出た。
彼女がジギリスと会見出来たのには、ひとつの魔法が関係していた。
エルム・ネスト……自らを味方だと思わせる呪文である。
エインスベルは、ジギリスだけにはその魔法をかけなかった。
なぜなら、彼女は権力というものを欲していなかったからである。
自分が今遣えているのは、クールラントの王である。
しかし、この度の戦争が終われば、それはどうなるか分からない
エルム・ネストの効果は一時的である。
エインスベルも、ジギリスの元を早々に退散した。
王宮の門の前では、リグナロスがかしこまりながら控えていた。
「リグナロスよ、今回はお前の伝手が役に立った。
しかし、お前自身もわたしを切り捨てることを、早々に考えておけ」
エインスベルは、そうして孤高の道を歩もうとしていた。
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