祭祀クーラスとエインスベル(一)/朧月夜
エインスベルは、その足で祭祀クーラスの邸宅へと赴いた。
もちろん、リグナロスとも同道のことである。
祭祀クーラス邸は、カラスガラの南地域にあった。
高い外壁で取り囲まれ、その広さは二百ヤロスほどある。
エインスベルは、まず門番の二人を眠らせた。
そして、慎重に足音を忍ばせながら、門扉のなかへと入っていく。
リグナロスは、「本当に大丈夫なのですか?」と尋ねる。
「ぬかりはない。お前は心配しなくても良い」……と、エイスベル。
あちこちに建てられている柱に身を隠しながら、二人は進んでいく。
祭祀クーラス邸には、思いのほか衛兵の数は少なかった。
これも、クールラントの国内で相当の権力を有しているからだろう。
中庭の真ん中に来た時、エインスベルは再びエルム・ネストの魔法を使った。
これで、クーラス邸の使用人たちは、エインスベルの味方となる。
祭祀クーラス、ただその一人の人間を除いて。
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