盗賊ヨランとの契約(四)/朧月夜
「ううむ」と、アイソニアの騎士は唸る。盗賊ヨランが、
ある種の決意を持って、この邸宅に忍び込んできたことは間違いあるまい。
しかし、彼の言うことが正しいとも限らない。この旅は単なる失敗に、
そして、エインスベルの生も処刑によって終わらないとは、限らない。
(いや、これはむしろ俺の問題だ。俺自身は、ヨランに託すだけの、
何物か、あるいは何事かを、持っているのだろうか……
俺は今、単なる感情に駆られているだけなのかも知れない。
自分の力を過信しているのかも知れない。奴は、世界のことを考えろと言ったのだ!)
その悩みは、深いものだった。アイソニアの騎士は、再びライランテ戦
[次のページ]
前 次 グループ"クールラントの詩"
編 削 Point(1)