世界の真実(六)/朧月夜
「お待ちください、アイソニアの騎士様。そして……、
エランドル・エゴリス様」盗賊ヨランは、その時うやうやしく首を垂れた。
そのヨランの振る舞いに、アイソニアの騎士たちも疑念を抱く。
「おい、この女は単なる案内役だろう? この女もそう言ったはず……」
「彼女は『導き手』とも、おっしゃいました。それをお忘れですか?
彼女は、単なる道案内ではないのです。わたしどもに、『世界』について、
教えようとしているのです──」
「よろしい、盗賊よ。わたしは先ほど魔術師と言ったが、盗賊よ」
「盗賊で結構でございます、エランドル様」ヨランは、顔を強張らせる。
「物分かりが良いな、盗賊。これからもそうであれば、余は楽だ」
「けっ。言ってやがる……。お前は男か? 女か? 俺たちを支配できると思うのか?」
「しっ、騎士様。この方は、『世界』と等しいような存在なのですよ?」
ヨランが息せき切って言う。──その調子に、アイソニアの騎士は初めて慄然とした。
(この間抜けが恐れるような者とは、真に恐れるべき存在なのか?)と。そして、前を向く。
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