フランキスの戸惑い(一)/朧月夜
 
フランキス・ユーランディアは戸惑いの表情を隠せなかった。
それを見て、イリアスが口を開く。
「貴方の面貌を察するに、交渉は上手くいかなかったのですね?」
「ふむん」フランキスは目を上げる。「貴女の関与することではない。

 貴女は今、人質の立場にあるのだ。これから、
 クールラントとアースランテとがどのような道を行くのか、
 それは貴女にかかっている。しかし、かかっていないとも言える。
 なぜなら……」フランキスは真正面からイリアスの目を見た。

「貴女の命は、アースランテにとってはとても軽いものであるからだ」
「それはそうでしょうね」と、イリアス。
それは、運命を受け入れ始めた少女の言葉だった。

己の運命すら、自分の思うままにはならない、という女の言葉だった。
「貴方はわたしを殺すのですか?」
「いや」フランキスは口を濁す。「貴女を殺したとて、状況は良くはなりますまい」
   グループ"クールラントの詩"
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