白痴のこと/りゅうのあくび
彼女は
他人のことを
一切話さない
でも言葉の壁
なんて何一つ
感じはしない
他の女性の話を
彼女の前で
したって
聴いていない
ふりをするだけで
毎夕 仕事帰りに
ドアを開けると
出迎えてくれる
終電が
無くなった
ある夏の
暑い日の夜
歩いて
家に帰る途中
家出をしていた
やや小さめの
影をちょうど
見つけて
面倒を見る
ことになった
彼女に母親は
もういない
兄弟も
もういない
彼女は
自分のことも
一切話さないのだ
ただ推測するに
彼女は絶家
になっているだろう
古い家族は
行方知れずに
なっていて
[次のページ]
前 グループ"猫詩集"
編 削 Point(9)