水滴を巡る追憶には/りゅうのあくび
激しい夕立は
突然やってきて
落雷で鉄道が遅れている
小さな駅舎で
雨宿りをしながら
駅の改札で恋人と
待ち合わせをしていて
豪雨は短いうちに
まるで屋根を
ひっくり返したように
ほとばしる雨音
大きな雨粒には
恋しい人の残像を映す
ひと粒の大きな水滴ぐらい
きっとあるだろうと探し始める
どしゃぶりの大雨は降りそそぐ
命の宿る水滴は
降り続く雨と
仕事の汗と
そして切ない涙と
あらゆる水分が集まりながら
蒸留水となって
蛇口からは
とってが付いた
屋根のない
小さな部屋のような
不思議なマグカップに
命の水が溜まる
恋人たちは命の水を
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