水滴を巡る追憶には/りゅうのあくび
水を飲み干すと
水分を含む大空の欠片になる
なぜだか遠い海の匂いが
ほんのりとして
ふたりの運命を見つけだす
愛のひと粒がある
ふと孤独ではない沈黙に
大きな水滴を巡って
追憶は呼び覚まされる
水分の結晶が
積もる雪化粧となる
大雪と引越が重なり冗談ではなくて
愛のひと粒をともに運ぶ
恋しい人と白い息をたて
眼差しの奥では微熱が生まれる
雪化粧は遠い海へと溶け出しながら
とても大きな雲になっていく
熱帯夜の大空を見上げる
入道雲がすでに
ふわりと通った跡がある
各駅停車が恋しい人を
ゆっくりと乗せて
到着するのは
いつになるだろうか
まだ遠く
[次のページ]
前 次 グループ"Lovers Fantasy"
編 削 Point(10)