初対面のふり/深水遊脚
ど。初対面のふりはそう難しくはない。もともと何も知らないのだ。
暖房の効きが思ったよりも悪い。部屋がうまく暖まっていなかった。シャワーを浴び終えた郁子に声をかけてみた。
「寒い?」
「ううん、大丈夫だよ。」
「僕は少し寒い。体が冷えたみたい。」
彼女の反応を注意深く確かめながら、バスタオルを外して軽く肌を重ねてみた。それから二人で蒲団のなかに入り、同じ強さで抱きしめて言った。
「しばらくこうしてていい?」
「いいよ。」
本当に10分くらいそうしていただろうか。油断すると眠ってしまうくらい気持ちよかった。どちらからともなく、体全体を軽くこすりつけるように動かした
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