初対面のふり/深水遊脚
 
を貰う私らがお客さんをお祝いしなきゃいけないのに、一応用意したけれど、これじゃ釣り合わないよね。」

郁子が差し出した封筒の中をみた。

「次回割り引きクーポン?」
「ごめんね。こんなんで。でもイブのデリヘル、本当にお客さん少ないんだよ。」
「なるほどね。お店としては分かりやすい感謝の示しかただね。指名客も増えるかもしれないし。」

郁子の顔が曇った。個人的な思いを寄せられることを警戒しているのは僕にもわかった。

「初対面のふりって、もっと難しいと思ってた。でもよく考えたら僕は郁子さんのこと全然知らないし。当時のクラスメートの適当な評価なんてまず当てにならないし。でも知らない
[次のページ]
   グループ"コーヒー散文集"
   Point(3)