情事/はるな
 
男性にも感心した。相手からの愛情は、とくには必要なかった。わたしはわたしを抱きたかった。そう考えるのは悲しいことだった。だから、いつも、できる限り熱心にわたしはそれらを行った。身体と身体であるべく。衝動を押さえ付けて物事を味わうのは、自分が大人になったのだと思えてたのしかった。我を失うことなんてなかった。我を失わなくても、いくらでも喜ぶことができたから。しかしそうではなくなるときがきた。困ると思った。でも実際にはそんなに困らなかった。行為のあとで、わたしはそれをうまく思い起こすことができなかった。それが情事なのだと思った。はかないことだと知った。わたしは彼の身体に敬意など払わなかった。観察すること
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