情事/はるな
 
ことも、愛でることもできなかった。しばらくして薄ぼんやりと思い出してくるのは、手つきや言葉でなくシーツの皺ばかりだった。わたしは抱かれたのだと思った。強烈にそう思い、もう抱かれたくないと思った。すごく疲れてくたくただったし、身体をうまく操ることができなかった。それでいて欲求はちっともみたされていなかった。というよりもわたしはわたしの欲求の所在を知ることが出来なくなった。あんなにも仲良く、手なづけていた欲求。それがきゅうに手に負えないものになってしまった。そんななかでも彼以外の人と行為をするのはやはり安寧だった。わたしはそうしてある種の自信をみたした。やはり子供が欲しいと思った。わたしは情事にはむい
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