情事/はるな
 
はじめて情事を体験したときそれは情事じゃなかった。情事と交尾はちがうことだとすぐにわかったし、わたしの体験するそれが情事ではないこともすぐにわかった。だから早く子供を作ろうと思った。交尾ならば結果をつくるべきだし、ものごとの結果を見るのは楽しい。幸運なことにわたしは女性で、父親が誰かを区別できないとしても成した子の母親はわたしに違いないと思った。でも子供はできなかった。なかなかできなかった。そうするうちにだんだんと行為が交尾から離れていくのを感じた。そこにたしかに愛情はあった。熱烈なものではないとしても。それは人格にたいする愛情ではなくて、身体への敬意だった。いちいちわたしは感心した。女性にも男性
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