【批評祭参加作品】書くということについて/kaz.
をつなぐ円筒の掛橋である。一方「書く」はその地平に向かう、果てなき冒険そのものである。つまり地図の空白部分を埋めることなのだ。
読むことが二つの対象を指定するのに対して、書くことが指定するのは空白である。書き手と読み手の関係も、こうした多角性/直線性を負って成り立っているようだ。読み手は望遠鏡でどんな方角を眺めるのも自由なのに対し、書くことは一つの方角に向かっていくことしかできない。行き詰まりに達することもある。書き手はそれを受け入れるしかない。
こう考えると、一読したときの印象と、再読したときのそれとが一致しない理由も、自ずから明らかにされる。遠くから見る富士山は美しい。けれども近付
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