原風景4/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
たら、もう戻れ」
権藤はそれだけをいうと、自分の机に戻り事務仕事をはじめるような素振りを見せ、もうこっちを見ることはしなかった。
用事さえすませば、厄介には一切かかわろうとしない。経験を積んだ、実に年配者らしい態度だった。生きるためにはこうすべきなんだよ、というような見事さが実に腹立たしい。
握りこぶしを固め事務所から去ると、現場に戻るまでの間、何がしかを思い浮かべさせられる。早足で歩くためによって起こる風が、頭から湯気が出ているかのようなほてりを強く感じさせられて、ああ今確かに怒ってるな、とわかる。わかると同時に、顔のこわばり、手足をはじめとする体の緊張、目線など、すべてが怒りによっ
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