原風景8/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
りやり頭に並べて弱気を押し切り、かぶりを振って目指す場所へ向かった。
 電話は商店街に出てから右に曲がってすぐのたばこ屋の、カウンターのようなところに置いてあった。電話の前に立つと、カウンターの向こうでどこにでもいるミセスタバコ屋的な老婆が老人力で佇んでいた。タバコを買うので顔だけは知っていた。他は名前も素性も知りはしなかった。
 タバコを買うのだと勘違いされないようカウンターからなるべく体をずらして受話器を上げ、硬貨を入れてボタンを押した。現場が忙しいのか発信音がしばらく続き、もう一回かけなおそうかというところで声が聞こえた。
「もしもし――」
 声を聞きああ、事務のあの人だとわかる。と
[次のページ]
   グループ"原風景"
   Point(1)