原風景8/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
ため、こまごまとした身支度をして気持ちを上げていきながら、外に出た。歯磨きや洗面のの行為ひとつひとつが、なにかの儀式のように思えた。
五万もする電話権など持っていないから、公衆電話からかけるしかなかった。ケータイなどまだ出始めで、貧乏人には高嶺の花だった。もっとも持っていたところで、かけてくる相手などはいなかったが。
アパートから数分歩くと公衆電話のある商店街が見える。とたん、心とは関係なく、いつもの日常的な風景だけがひろがる。その日常ぶりの明るさかげんに、急に圧迫感を覚えた。
気負い、もしくはこれから展開されるであろう戦いへの不安が、そう強く思わせるのだろう。
そんな理屈をむりや
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