原風景1/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
れることになるのだ。
ここで働く者たちは、雑談で時間が経たない苦しさをごまかしながら金のために暇をつぶしている。ベテランになればいくつもの雑誌を担当しなければいけないので時に大変忙しくなるのだが、忙しければ忙しいなりにヨタ話なんかをして楽しくやっていたりした。
「なんで、急にそんなこというのかねえ」
「いやあ残業しねえからだってさ」
「おかしいねえ、強制でそんなことさせられるわけないし、クビにだって出来ないはずなんだけど」
「会社がそういうんだからしょうがないよ」
コンベアからはそれなりに音が出て、多少は話をしても周りに迷惑はかからなかった。稼動熱のせいかいくぶん熱気がコンベアから来ているような気がする。熱気と騒音で出来たトンネルに会話を通すような感じが、誰かと話をするたびにする。
「なんで? ゴネてみたらいいじゃん金取れるかもよ」
そう言ってみたが、原田は下を向いて苦笑し、首を横に振るだけだった。
なんだろな、と素直に思った。
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