ライブのこと/はるな
か、わたしが一方的に見入っているだけなのだけど。
そのひとはベースみたいだった。というか、ベースがそのひとみたいだった。繋がっているようだった。弾きながら、じっとしていられないという風にステップ、踊るのだけど、ベースがぜんぜんじゃまそうではなく、というよりも、ベースがあるおかげでものすごく踊りやすい、というふうに踊っているのだった。
それは不思議なことだ。
幼いころ、長年ピアノを習っていた。わたしはレッスンがすきじゃなかった。鍵盤はかたくてつめたくて重たいし、先生のけばけばしい香水の匂いも慣れなくていやだった。
あのころ、なめらかに動く同級生の指を恨めしい気持ちでみていた。まるでわたし
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