準備のこと/はるな
うこともある)。それはもうわたしに必要な「準備」ではなくなったのだ。
夕方、彼はうちへ帰る三十分から一時間ほど前に電話を寄越す。わたしはそれにあわせて、スープが温まるよう計算して、テーブルを整える。洗濯物はみな所定の位置に畳んでしまってあるし、床は磨かれている。昼間に書いた文や絵は彼の目の届かないところへしまってあるし、玄関の靴もみな靴箱へ納めてある。肉や魚は彼の顔をみてから焼けばちょうど良いし、バスタブもあとはお湯を張るだけ。彼の帰りにあわせて、わたしの「準備」は整えられる。
たぶん、わたしの「あした」は、いつの間にかどこかへいってしまったのだ。もともとなかったのかもしれない。時間の
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