準備のこと/はるな
 
間の感覚が、人とはすこし違っているのに気づいたのは、ずいぶんたってからだった。準備ができないのも、準備ができないことで恐怖を感じることも、あるいは「準備」でさえない、自分の安定に必要な物事を整えることも。たぶん、ほかの人々の準備とは、ちょっと意味が違っている。でもべつにそれは憂うことではないし、今日と明日の区別に劣っているからといって、生きていく準備をしないわけにはいかないのだ。
ただ、それが「準備」であるからには、目的がどこかに設けられているはずだ。それがわからないまま闇雲に準備してしまうから、こうなるのだろうか。
わたしの安心のために、一日を準備で終えてしまうことって、意味あるのかしら。

そうは思いつつも、葱をきざみ、豚肉を蒸して、彼の帰りにぴったり合うように食卓を整える。準備が間に合っても、たとえ合わなくても、彼は帰ってくるし、明日もそのようにやって来るのだ。やって来て、去っていく。そのためだけに。


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