電話のこと/はるな
 
ていて、端整な顔だちをしている。指が長くて、ハイライト・メンソールを吸っていて、お酒が好きで、肝臓を悪くしている。
お前には無理だよ。早く戻っておいで。
たのしむような口調。
無理なのかもしれない、と、だから思ってしまう。
鶏肉、台所、窓からみえる干しっぱなしの洗濯物、しみわたる夕焼け。
嘘をついている気持ちになる。
あるいはなにもかもが嘘で、ほんとうではないのだという気持ち。
それはでも、突然思うことではなくて、もうずっとここにある。ただ忘れていただけなのだ。日々があまりにも安寧で、すこし死に似ていて。忘れてはいけないのに、忘れていただけなのだ。

往来を通る車のナンバープレー
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