電話のこと/はるな
 
レートは、見慣れない土地の名前ばかり。でも季節ごとに咲く花は、だいたい変わらない。日の落ちる時間も、のぼる時間も。大通りに立ち並ぶのは見慣れたチェーン店と、大型スーパー。小学生の頬は柔らかく、自転車は勇敢。ではなにが変わったのだろう?こんなところまで来てしまったのに。
お前には無理だよ。
でも、ためしてみたかったのだ。自分にはぜんぜんふさわしくないような環境を、手に入れてみたかった。でもそれはぜんぜん手に入らなかった。それは、そうだ、その場に相応しい自分になることでしか、手に入れられない類のものだった。
早く戻っておいで。
それでも、帰る場所はここになってしまった。そのことを言ったら、友人は、笑うだろうか。


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