そこの町/……とある蛙
5歳の僕は風の中にいた。
底の町から吹く風は暖かかったが、
上の町から吹く風は冷たかった。
底の町から吹く風を顔面に受け止めて
膨らんでゆくと
僕は虫になって舞い上がった。
谷の反対側のお屋敷町を
ゆっくり飛んで眺めながら、
小盗人の僕は
柿の木、栗の木、枇杷の木と
めぼしをつけて土手まで戻った。
土手の上に腰掛けて底の町を眺めていると
箱庭のような底の町の
とても小さな家のとても小さな庭から
とても小さく見えるばあちゃんが大声で叫ぶ。
「こらぁ、降りてこんかい」
土手は上の町の人のもの
底の町の子のものではない。
ばあちゃんが怖がっているものが
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