そこの町/……とある蛙
のが何なのか
5歳の僕には分からない。
春にはつくし、秋にはすすき、夏草はぼうぼう
土手はいつも僕の居場所だった。
いつも土手の上を舞い上がっていた。
家の中が揉めているとき
兄弟げんかに負けたとき
近所の子にいじめられたとき
一人で、ごっこ遊びをするとき
肺病やみで家にいない母を考えるとき
都会の小さな谷間に
僕の住んでいた町があった。
そこにはいつも小さな風が吹いていて
5歳の僕はいつも土手の上で
くるくるくるくる舞い上がっていた。
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