霧の様な死あるいはナルシシズムについて/立原道造を読む/渡邉建志
 


■未刊詩集「田舎歌」より 一日は…… (部分)

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揺られながら あかりが消えて行くと
鷗のように眼をさます
朝 真珠色の空気から
よい詩が生れる


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ちつぽけな一日 失はれた子たち
あてなのない手紙 ひとりぼつちのマドリガル
虹にのぼれない海の鳥 消えた土曜日


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しづかに靄がおりたといひ
眼を見あつてゐる――
花がにほつてゐるやうだ
時計がうたつてゐるやうだ

きつと誰かがかえつてくる
誰かが旅からかえつてくる


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あかりを消してそつと眼をとぢてゐた
お聞き――

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