因数分解中毒者のために/小林レント讃2/渡邉建志
して重要なのは、犬の声や話す顔をやっぱり次の聯で考えざるを得ないところだ。自分で助産してしまった犬だから、読者としてもこの犬がかわいくてたまらないんじゃなかろうか。「平凡な犬が好きな僕は」、という、ここでもわざわざ「平凡な犬」といっているのもたまらないし、その「好き」な気持ちも共感せざるを得なくなってくる。それから「僕」は「できるだけよいこたえを探」す。好きな平凡な犬のためにがんばる少年のけなげさ。さて答え探しはすこしずつ文字数が増えて、最後に現われるのが名作「因数分解中毒者」である。注目は、「平凡な犬」(4回)という単語にこだわっている「僕」がこんどは「因数分解中毒者」(5回)という単語にこだわ
[次のページ]
前 次 グループ"フレージストのための音楽"
編 削 Point(4)