生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 
ている。「まだ/それでいい」から「もう/それでもいい」へ。なにがいいのか。最初は、生きるものの「音」しか聞こえない、僕はまだそれでいい、と言う。次に、崖をのぼっていく水が「見える」のだ。そして僕はもうそれでもいい、という。つまり、少年は今、生と死のあいだにいる。生きているものには死者の声は聞こえないけれど、たぶん崖をのぼる水も見えないはずだ。それが見えている彼は、死に片足を突っ込んでいる。だから、彼は「もう」それでもいい、と言っているのだ。この、呟くような「もう/それでもいい」を読むとちょっと泣きそうになる。そのまえに、「まだ/それでいい」があるからこそ、この、「もう/それでもいい」の哀しさは増す
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