生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 
くこれからも会うことはないだろう。この詩は、この特別な「老いた少年」にしか書けないものだから。かれの、まるで杖をつく老人のような、静かな諦めの視線は何か。生前と死後のあいだのような、このしずけさは何か。

1.
透明な水たちが
泡立っている
泡立ったまま
崖をのぼっている

この比類ない映像。逆流する滝、と一言で表現しない。滝とはここでは呼ばない。「泡立ち」を繰り返して、読むものにリズムを与えると同時に、映像もまた鮮麗なものとして与えている。

2.
その崖は
かつて

と呼ばれていた

の下
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