浸透と破水/キキ氏の作品について/渡邉建志
り。短い単語の中の。つ、がいいですね。それと、この、「ば、名詞」の形には、強いイメージ喚起の力があると思う。「トンネルを抜ければ雪国」的に、読者を引っ張っていって新しいせかいを見せていく。読者を連れて行く。
「漕ぎだせば、月、ありあけ」がずっと忘れられないでいる。ふとしたときに、ふと頭の中で再生される。それを聞きながら、船の音を思う。漕ぐ音。それから夜明けの月。船の上の死んだ君とわたし。
なぜだか蒼い、君の眼球。白みにはうっすら血が通っていて、あんま
り揺れるのでくべてしまう
さあ手を、
くべてしまう、という音が頭から離れない。う
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