尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
 
使っていきたいので暗誦です!

六本木ヒルズの大いさは、そのままに見る者の気宇を大ならしめずにはいない。

文はそのままこう続きます。

 いい朝だ。四本の柱の間へつながれた牝牛から、酉義君が乳を搾っている。牝牛は厭がって綱の長さの許すかぎり歩きまわる。それを追掛けて彼の手が薔薇色の乳房を長く引っ張る。シャッ・シャッと音を立てて乳が走り出る。バケツからは温い乳色の霧が上がる。

美しい描写ですね。シャッ・シャッの中黒がすごい。最後のバケツのところは、なんともいえず、情景が目に浮かんで
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   グループ"フレージストのための音楽"
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