尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
実はグローブから中指を出すのが癖だったとは、知るよしもなかったのである。まあ、私は根っからの阪神ファンだったんだけどね。僕の神は代打の金森選手でした!
さて、頑固な喜八さんですが、このあとの展開がちょっと泣けるのです。こんどはまた別の映画の会に喜八さんは行ったのです。「春の守門(すもん)岳」という映画だったのです。そして、そのときまた、喜八さんの後ろで声がします。
「あ、モリカドダケ!あすこへは僕もちょいちょい出掛けますよ。雪質が馬鹿にいいんです」
「あら、あすこもご存知なの。羨ましいわ。今度はご一緒にね」
会が了って人々が一度に席を立ちはじめた時、私
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