尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
 
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さて我らが喜八さんは目的地、追分に着いた。その文章はまるでベートーヴェンのような足取りを感じさせる。私たちも思わず熱くなってはしまわないか。

 さあ、その追分にいよいよ着いた。忘れ物はないか。汽車が出てしまってから線路をわたるのだ。
 プラットフォームの熱い砂利よ、ダリアの花よ!わけても弥陀ガ城の濃い陰影を真正面に見せた厖大な浅間よ!私たちは今年も来た。お前の裾野の郭公の歌と、お前の涼しい夕菅の花とで、静かに私たちを包んでしまってくれ!

「静
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