私は顔を洗いに行く。 母屋のはずれ、路に沿って石垣を積んだところに、山から引いた水が音を立てて落ちている。清冽な、手も切れるように冷めたい水だ。その水をうける古い樽の中には、今朝私たちの膳に供えるつもりだろうか、一束の蕨が漬けてある。澄みきった水の底で、その色が美しかった。 顔を洗っているとこの家の娘が水を汲みに来た。私を見て丁寧に挨拶する。客に対す [次のページ] 前 次 グループ"フレージストのための音楽" 編 削 Point(3)