ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
す。さて、恋愛を取るのか、静寂を取るのか、というこのぎりぎりのバランスは、いちばん最初の「いやなんです/あなたのいつてしまふのが」の、恋とはちがひます、ちがひますという必死の否定と同じ心の動きなのでしょう。ここでも否定だらけです。「いけない」「いけない」「知れない」「しれない」とにかく矢継ぎ早に否定です。二人の(?)こころの永遠の静けさを守るために。
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「からくりうた」
かんべんしてください。
酒の泡からひよつこり生れた
酒のやうなる
よいそれ、女が逃げたええ
長沼智恵子は酒造りの家に生れた人らしいです。それ
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