水の駅/千波 一也
はるか
昔を向いているひとの
すべてが灯りと
なりますよう、
祈るわたしは
濁れるわたし
ひとごとみたいに
まったく淡い
時刻表
五本の指があるわりには
そこに受け取らされる
小さな切符
両の目で
ようやく確かめられるほどの
小さな印字
持てるちからを
さらけ出すよりほかにすべのない
穏やかな往来の
水面下
めぐりめぐる
水の世界で
あいさつ言葉は
どれほどの意味を
なくさずに往けるだろう
心許なく
改札をくぐる
無言のうちの
あいさつ言葉を
だれが心に留めるだろう
はるか
未来を描いているひとの
まぶしさは、そう
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