連作「歌う川」より その3/岡部淳太郎
 
れており
ひとつの大家族が住んでいた
彼等は上流から流れてきてここに住みついた
川の
漂流民だった

自らを家長と呼ぶ
老人が
家族を紹介した
――おいで、子供たち。
老人が手を叩いて呼ぶと
川の中から子供たちが顔を出した
その数は十二人だった

また老人は
家の奥に入り
施錠された扉の前で口に手を当て囁いた
――妻よ、出て来なさい。お客さんだよ。
だが扉の中からは物音ひとつ聴こえず
人の気配さえもしなかった

十二人の子供たちは
祈る人を泳ぎに誘った
――見ててごらん。僕たちは魚みたいに泳げるんだよ。
一番年長と思われるひとりが云い
川に飛びこん
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