俺と鳥/緑茶塵
 
兄の家の正門にたどり着いた。何故か人気が無い。

兄は夜逃げしていた。

今度はあの坂をじりじりと下っていく。坂の下りは楽だと言う奴がいるが、俺はそうは思わない。坂は上りも下りも嫌なものだ。

帰りのバス停をとりあえず二つ先で降りた。あの老人を探すためだ。しかし降りた後でどうしたものかと思った。とりあえずバス停に腰掛て、タバコを一本吸う。段々と嫌になってきた。このまま鳥を置いていっても、誰にも責められる筋合いはないような気がする。そうしてしまおうか?
ひょっこりとあの老人がやってくるのをどれ位待つつもりなのか?
それとも気合を入れて引き取り手を捜すか?

タバコを吸い終わる。
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