夢にみた女/結城 森士
 
収容所には煙が揺れ昇り
黒い灰が風に舞っていた

坂道を上りきった辺りで
俺は砂利道を駆けていた
工場に向かって

一人の女と街角でぶつかった
奴は俺の顔を睨んで何かを言ったが
俺はそれを聞かずに「あぁ」と言って
そのまま逃げるように走り出した

黒い太陽が街並みの影を燃やしている
黒い炎で街中が燃えている
俺の影は揺ら揺らと揺れているだろう
煙と灰が舞っているのだろう



風が俺の脚に埃をぶつけてくる度
乾いた音をバラバラと立てていて
そして何らかの拍子で俺は
川へ向かうことに決めた

手を洗いたいのだ
黒く汚れた手を洗いたいのだ
街中が黒
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