小詩集【ちいさなてのひら】/千波 一也
 
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一、この手

誰かと比べてみたならば
大きい小さいは
あるかも知れないけれど
空はあまりに広いし
海はあまりに重たくて
ほら、
ひとの手は
どうしようもないくらいに
小さいものだったね

この手は
たやすく何かを失えるから
きっとすぐにも
何かを
つかめる

無邪気だった日のあこがれは
いまも元気に駈けていただろうか

ねぇ、きみ
恥じらうということは
その手が生き生きとして
忙しいということだね
もちろんこの手も
悔やんでは振りはらい続けているよ

欲しいものの名前を呼んでごらん
忘れてしまえることを知って
休むことなく
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