小詩集【ちいさなてのひら】/千波 一也
{引用=
一、この手
誰かと比べてみたならば
大きい小さいは
あるかも知れないけれど
空はあまりに広いし
海はあまりに重たくて
ほら、
ひとの手は
どうしようもないくらいに
小さいものだったね
この手は
たやすく何かを失えるから
きっとすぐにも
何かを
つかめる
無邪気だった日のあこがれは
いまも元気に駈けていただろうか
ねぇ、きみ
恥じらうということは
その手が生き生きとして
忙しいということだね
もちろんこの手も
悔やんでは振りはらい続けているよ
欲しいものの名前を呼んでごらん
忘れてしまえることを知って
休むことなく
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(18)