詩人・一期一会 〜其の一・落合朱美詩集「思推」を読んで(上)〜/服部 剛
 
いうことかもしれないし、あるいはもし、幼い頃からすでに、
「言葉の無力さ」を感じていたなら、それ故(ゆえ)にその後の彼女は自ら
の偽りの無い詩の言葉を綴(つづ)ることで、胸に空いた哀しみの空洞を埋
めようとしたのかもしれない。 

 そして、時に誰もが感じる「人間の哀しみ」を抱えた詩人・落合
朱美が、かつては無力と感じていた詩の言葉で、自らを快復してい
こうという想いが表れ始めるのが、「風葬」というこの詩の題の意
味を表す最後の二連である。 


  うすずみ色の便箋に 
  送る宛てのない歌をしたため
  紙飛行機を折り 
  祈る

  できるだけ遠
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