詩人・一期一会 〜其の一・落合朱美詩集「思推」を読んで(上)〜/服部 剛
 
」という詩の一〜四連目迄を読むと、彼女が
幼い頃に感じた寂しさが、詩を書くことの源泉としてあるような気
がするのである。そして、自らに纏(まと)わりつく影が、「 誰かを愛そ
うとするたびに 耳元で呪文を投げかける 」という描写に、思春期
から大人にかけて、葛藤を抱えながら生きて来た心情が表れている
と思う。「 窓辺の秋桜(コスモス)が 孤独にうちひしがれて 」という描写も、
自ら振り返った幼年期の姿そのものであるかもしれない。そして詩
人である彼女が「 言葉は私の味方ではなかった 」と書いているの
は見逃せない一行であるが、当時の彼女はまだ詩を書いていなかっ
たという
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