詩人・一期一会 〜其の一・落合朱美詩集「思推」を読んで(上)〜/服部 剛
傷口が深いほど、思春期から大人へと成長する中で、
その子供は誰にも言えない葛藤を抱えるであろう。そして、大人に
なってもその傷口が癒えない場合は、「幼い頃の哀しみの体験」ま
で遡(さかのぼ)り、「大人になった自分」が置いてきたまま、遠くで独り哀
しんでいる「子供の自分」を迎えに行き、ありのままの姿を包むよ
うなまなざしで見つめ、頭をなでてあげることが過去の傷口を癒す
最初の術であると感じる。人は誰もが、大なり小なりのトラウマを
抱えているものかもしれないし、落合朱美という詩人が幼い頃に感
じた哀しみがどのようなものであったかは、本人以外は知り得ぬこ
とだろう。只、「風葬」と
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